令和5年3月15日 財務金融委員会
法人の消費税の還付申告数が近年増加していることを踏まえ、その増加の理由や還付申告に対する税務調査のあり方について国税庁に質問しました。
今年10月に導入されるインボイス制度が税務調査に与える影響やインボイス導入による不正還付への影響についても見解を伺いました。
○岬委員 皆様、おはようございます。日本維新の会の岬麻紀でございます。本日もどうぞよろしくお願い申し上げます。
それでは、早速ですが、先週の委員会では、訪日外国人のインバウンド消費におけます免税制度における消費税の不正還付に絞って質問をさせていただきましたが、本日は、国内の消費税全体の不正還付について見ていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
私も調べましたところ、現状でございますが、法人の消費税の納税申告数というものは、平成三十年には百八十七・一万件、それが令和三年を見ますと百八十五・七万件ということで、全体を通じて横ばい若しくは安定していると思われます。これを法人の消費税の還付申告数ということで見てまいりますと、平成三十年には十四・九万件、そして令和三年には十九・八万件です。これは約五万件増えております。
では、次に、法人の消費税還付税額というものを見ていきます。そうしますと、平成三十年には四・三兆円、それが令和三年には五・八兆円になっています。その差は一・五兆円増えているということです。
それでは、ここで質問です。
法人の消費税納税申告数、この件数は大体百八十六万件前後で推移をしているわけです。そして、消費税の還付申告数、今御紹介をしたように、全体に増えています。これは右肩上がりでございます。それに伴いまして還付税額も増加をしております。政府は、還付申告数の増加についてどのような理由を考えていらっしゃるか、またどのような分析をしているのか、まずはそこから教えてください。
○星屋政府参考人 お答え申し上げます。
直近三年度の法人の消費税の還付申告件数を申し上げますと、令和元年度、年度ベースでございますが、約十五万四千件、令和二年度は約十八万三千件、令和三年度は約十九万九千となってございまして、委員御指摘のとおり、増加傾向にございます。
還付申告件数が増加している要因につきまして、一概に申し上げることは困難でございますが、一般論として申し上げますと、消費税は売上げに係る税額から仕入れに係る税額を控除して税額を計算する仕組みでございますので、例えば、多額の設備投資を行ったことや輸出免税取引が多くなったことにより、売上げに係る税額よりも仕入れに係る税額が大きくなる場合には還付となりますことから、こうした法人が増加すれば、還付執行件数の増加要因となり得ると考えてございます。
○岬委員 ありがとうございます。
もちろん、その差額ということになってくると思いますし、また、ここ近年を見ますと、コロナの影響も、企業にとって売上げが減っているなども考えられるかと思います。
次に、政府の取組についても調べてみました。
消費税不正還付について、こちらは、実際は還付金を受け取っていないのに、虚偽の申告を提出して、その時点で罪が問えるようにするというものがございます。これが消費税不正還付の未遂罪、二〇一一年度の税制改正で創設をされています。
本日、皆様にも新聞記事を配付をしております。この記事は二〇二三年二月十五日の読売新聞の記事でございます。さらに、この記事によりますと、国税庁によると、この未遂罪、初めて適用されたのは二〇一四年度で、その後も少なくとも全国で十数件の告発が行われております。それでもまだこの不正還付申告、今も後を絶ちません。昨年六月までの一年間に全国の法人に対して行われた税務調査では、七百九十一件の不正申告が見つかっています。法人への追徴課税、前年比で約三倍です。百十一億円にも上ったとこの記事には記載がございます。
東京国税局は、昨年九月の三十日に、この消費税の不正還付への取組を強化するということで、消費税不正還付対策本部を立ち上げていらっしゃいます。これは全国で初でございます。申告を専門的に調べる調査官や課税の可否を審査する審理部門、さらには税金の徴収部門ということで、職員の皆様約百三十人体制で整備をされていると伺っております。
そこで、二つ目の質問でございますが、実際に、この法人の消費税還付申告に対する調査件数、どのように行われているでしょうか。教えてください。
○星屋政府参考人 お答え申し上げます。
消費税還付申告法人に対する税務調査につきましては、新型コロナの影響によりまして税務調査全般を抑制していた中で、コロナ前に比べ調査件数は減少してございますが、令和三事務年度におきましては、四千二百五十二件の実地調査を行いまして、約三百七十二億円を追徴課税したところでございます。
このうち、不正計算を把握したものは、全体の一八・六%に相当する七百九十一件ございます。コロナ前の平成三十事務年度が一二・七%でございましたので、これに比べては増加しているところでございます。また、不正計算に係る追徴税額は約百十一億円となってございまして、コロナ前と比べても二倍以上となっているところでございます。
○岬委員 ありがとうございます。
今の答弁をまとめますと、つまりは、平成三十年には六千五百五十三件のうち、令和三年になると四千二百五十二件、調査する件数は減っているけれども、その中で不正を見つけた割合は増えている、そして追徴課税などでしっかりと取ってきた、その成果がある、そういったお話だと思います。
それでは、次の質問です。
それの中で、政府はこれまでも、今のように不正防止のために調査体制を強化して、さらに、不正の解明ですとか抑止ということでも力を注いでいらっしゃったと認識をします。ただ、全てをチェックをしていくというのはかなり困難ですし、煩雑な業務でもあると考えます。
国税庁は、これまでの申告状況から、消費税の不正還付が想定される法人をリスト化をして管理をしていることもお聞きしました。この中で、やはり一番大事なのは公正性、厳正性ということだと思われます。調査の件数で、優先度合いであるとか、またどのような方針で、またどのような目標を持って御対応されていくのか、確認をさせてください。
○星屋政府参考人 お答え申し上げます。
消費税の不正還付問題につきましては、輸出免税制度を悪用するなど事案が複雑、巧妙化していることから、国税当局といたしましては、重点課題として位置づけて取り組んでいるところでございます。
具体的には、消費税に係る還付申告書の提出があった場合には、申告書の添付書類や保有する資料情報等に基づきまして厳格な審査を行い、申告内容に疑義がある場合には、還付を保留し、書面照会や実地調査を行うなどいたしまして還付原因等の解明、確認を実施し、申告内容に誤り等が認められた場合には確実に是正をしてございます。
また、還付後でありましても、還付申告の内容に疑義が生じた場合には実地調査を通じて解明、是正を行うなど、国税当局として厳正に対応しているところでございます。
今後とも、不正還付事案の態様や手口も見極めながら、こうした厳格な審査と的確な税務調査等を通じまして、不正還付の防止に努めてまいりたいと考えてございます。
○岬委員 ありがとうございます。
今のお話、まとめますと、結局、徹底的にきちんとやるんだ、そういった実績をお答えいただいて、さらに、時代によって複雑化、巧妙化している、手口もいろいろと新手が出てくるということで、その辺りもチェックをしているということだと思われます。
そして、重要なのは、今お話にもありましたように、還付をまずは保留して止めるというところなんだと思われます。結局、不正を行う側も、やっても無駄だと思わせれば、それを食い止めていく抑止力にもつながるかと思われます。一方、正規できちんと申告をしている方には、一刻も早く、速やかに還付処理をしていただいて戻していただくように、強くお願いをしたいと思います。
それでは、次に、これまでも幾度となくインボイス制度の質問や是非が問われてまいりましたが、今年十月のインボイス制度の開始によりまして、税務調査の際に請求書がインボイスであるのかそうでないのかという確認も必要になってくると思われます。税務調査を行う調査官のいわゆる作業の負担、調査の負担にもなるのではないでしょうか。
まず一つ目、インボイス制度の導入が税務調査に与える影響、そしてもう一つ目が、インボイスの導入による消費税不正還付への影響、この二つはいかがお考えでしょうか。お答えください。
○星屋政府参考人 お答え申し上げます。
インボイス制度の開始後は、仕入れ税額控除の適用を受けるためには、原則として、課税仕入れに係る帳簿及びインボイス発行事業者から交付されたインボイスの保存が必要となります。
具体的には、買手の行った課税仕入れにつきまして、適正なインボイスの保存がない場合、その不足する内容を他の書類等から確認できない限り、原則として仕入れ税額控除の適用を受けることはできないこととなります。したがいまして、税務調査におきましてもこのような確認が必要となるということでございます。
それから、インボイス制度開始後は、インボイス発行事業者と通謀等しない限り、仕入れ税額控除、架空仕入れを計上することは困難になると考えられますので、消費税の不正還付につきましても一定の抑制が働くものと考えてございます。
また、国税当局といたしましても、税務調査の際に、登録されたインボイス発行事業者の情報や発行されたインボイスを通じまして、消費税不正還付の解明、是正に活用することが可能となると考えてございます。
引き続き、様々な情報を活用しながら、的確な税務調査等を通じまして、不正還付の防止に努めてまいりたいと考えてございます。
○岬委員 ありがとうございます。
税務調査の調査官の負担も増えるけれども、不正を行おうと試みる側も一手間、二手間増えていくので、それが抑止になるのではないかということなのだと私も認識をいたしました。
今お答えいただいたように、そして、先月に審査されました所得税法の一部を改正する法律案の附帯決議では、社会的関心の高い消費税の不正還付防止への対応の強化というものもございます。
やはり、消費税というものは、全ての国民が品物を買ったりサービスを受けたりした場合に平等に課せられてくるものですから、社会的な関心度は必然的に高くなるとも思われます。ですからこそ、公平性というものは非常に重要でございますので、是非とも引き続ききちんとした調査を行っていただきたいと思っております。
なお、この不正還付につきましては、消費税だけではなく、所得税での不正還付の報道もございました。これが配付資料の二枚目の記事でございます。「所得税不正還付 百九人に指南」というもので、二〇二三年三月一日の読売新聞でございます。これは、内容を言いますと、会社員百九人の所得税の不正還付を指南しまして、架空の事業で赤字が出たとする虚偽の確定申告を税務署に提出をさせて、計約四千三百万円の不正な還付申告を行わせたという記事でございます。
一人一人が正しい申告に基づく日本の納税制度の維持には、先ほども何度も申し上げているように公平感が不可欠です。不正な手段がまかり通ってしまうと、制度自体の信用性を損ないかねません。副業や兼業の推進と併せて、税制度などについても更に周知や徹底を図っていくべきだという意見もございます。
そこで、最後の質問となるかと思われます。
不正を防ぐために、まずは不正を行わせないようにする制度の見直し、そして適正化が必要です。二つ目に、不正を行っていないかしっかりとチェックをする機能が必要になります。三つ目に、不正をした場合には、その者に対してきちんとしたペナルティーを科すことによって、それが周りへの周知をすることによっての抑制にもなると考えられます。
この不正還付の防止に対する観点から、最後、大臣からのお言葉を頂戴したいと思います。お願いいたします。
○鈴木国務大臣 国税庁次長からも答弁をさせていただきましたけれども、国税庁におきましては、従来から、消費税の適正課税の確保、これを重要課題と位置づけておりまして、とりわけ不正還付事案につきましては、重点的に税務調査を行うなど、厳正に対処をしているものと承知をしております。
その上で、税務執行体制の強化を図るため、令和五年度予算におきましては、業務の見直し、効率化等を最大限に進めつつ、消費税の不正還付への対応を始め、全体として三十七名の定員増を行うなど、国税庁の体制整備を進めることとしております。
今後とも、消費税の不正還付事案に対しては、税務執行体制の強化も図りつつ、厳正に対応してまいりたいと考えます。
○岬委員 ありがとうございます。
全ての国民の皆様方に関わってくる消費税の不正還付について今日は伺ってまいりました。これからも、厳正なる、そして公平な措置をお願いしたく存じます。
それでは、質問時間が終了いたしましたので、終わります。ありがとうございました。